7つの能力が育つ!小学生からのプログラミング教育の効果とは?
少子化により教育業界の競争も激しくなる中、プログラミング教育が注目されています。しかしプログラミングを学ぶことでどのような効果が期待できるのでしょうか。ある研究からはプログラミング教育で幅広い能力が身につくことが示されています。具体的にはプログラミング能力に加えて、創造性や数学的能力、メタ認知能力、論理的思考、空間認知能力、学業成績が改善されることが分かっています(Scherer et al., 2019, 2021)。
ではなぜプログラミング教育でこれらの能力までが改善するのでしょうか。これには転移学習というものが関わっていると考えられています。これは、あることを学ぶことで、他のことも自然と上手になることです。
例えば野球を習うことでサッカーも上手になれる可能性があります。というのも、野球を練習することで、フィールド全体を見る力や速く走る力などが養われるからです。これと同じようなことがプログラミング学習でも起こります。プログラミングを学ぶ中で自然と創造性や論理的思考が養われるため、これらの能力が高まるというのです。
プログラミング教育の効果についての研究は長い歴史があるのですが、ノルウェーの教育学者、シェーラー教授はその効果について詳しく調べています。この研究では、1967年から2017年までの50年間に発表された105件の研究データを取りまとめ、小学生、中学生、高校生らに対するプログラミング教育が持つ効果について解析を行いました。その結果が以下の図に示すものになります。
図の中で示されている効果量とは、どれくらいの効果があるかを示す指標になります。一般的な解釈としては、0.2が小さな効果、0.5が中等度の効果、0.8が大きな効果と言われています。身近なところでいえば、小児期の3種ワクチン(麻しん、おたふく風邪、風疹)の効果量はおよそ1、インフルエンザワクチンの効果量はおよそ0.5になります。
この研究の結果としては、プログラミング能力が0.75、創造性が0.73、数学的能力が0.50、メタ認知能力が0.44、論理的思考が0.37、空間的認知能力が0.37、学業成績が0.28の効果量となっています(Scherer et al., 2021)。
これを一般的な解釈に当てはめれば、プログラミング能力と創造性については大きな効果があり、数学的能力やメタ認知能力、論理的思考、空間認知能力については中等度の効果、学業成績には小さな効果があると考えることができます。
効果量にこのように差が出た理由として、シェーラー教授は、「近い転移」と「遠い転移」の違いではないかと述べています。近い転移というのは、内容的に共通するものが多いのでその効果も大きくなるのですが、遠い転移というのは、共通点が少なくなるため、その効果も小さくなるというのです。例えば野球をすることでソフトボールへの学習転移は大きいかもしれませんが、水泳への学習転移は小さいかもしれません。
プログラミングはその学習内容中心に創造性が要求されるため、創造性への効果が大きくなるものの、学業成績で求められるものとの共通点が少ないため、その効果も小さくなると考えられています(Scherer et al., 2018)。とはいえ、学業成績で示されている0.28という効果量も決して無視できるものではありません。なぜなら、これは一般的な補習授業の効果量と同じ程度にあたるからです(Hattie, 2008)。
このようにプログラミング教育には幅広い効果があることが分かっています。とりわけ高い効果が期待できる創造性は、これからの時代に特に期待される資質でもあります。さらに学業成績を押し上げる効果があるので、既存の補習授業との相乗効果も期待できます。
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< 参考文献 >
- ■ Hattie, J. (2008). Visible learning: A synthesis of over 800 meta-analyses relating to achievement. routledge.
- ■ Scherer, R., Siddiq, F., & Sánchez Viveros, B. (2019). The cognitive benefits of learning computer programming: A meta-analysis of transfer effects. Journal of Educational Psychology, 111(5), 764.
- ■ Scherer, R., Siddiq, F., & Sánchez-Scherer, B. (2021). Some evidence on the cognitive benefits of learning to code. Frontiers in Psychology, 12, 559424.
- 著者紹介
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シュガー先生(佐藤 洋平・さとう ようへい)
富山大学大学院 生命融合科学教育部 認知情動脳科学専攻 後期博士課程 修士(健康科学)
- 筑波大学にて国際政治学を学んだのち、飲食業勤務を経て、理学療法士として臨床・教育業務に携わる。人間と脳への興味が高じ、畿央大学大学院へ進学、脳波を用いた研究に携わる。現在富山大学大学院博士課程でコミュニケーションに関わる脳活動の研究を行う。
2012年より脳科学に関するリサーチ・コンサルティング業務を行うオフィスワンダリングマインド代表として活動。研究者から一部上場企業を対象に学術支援業務を行う。
研究知のシェアリングサービスA-Co-Laboにてパートナー研究者としても活動中。
日本最大級の脳科学ブログ「人間とはなにか? 脳科学 心理学 たまに哲学」では、脳科学に関する情報を広く提供している。 - 筑波大学にて国際政治学を学んだのち、飲食業勤務を経て、理学療法士として臨床・教育業務に携わる。人間と脳への興味が高じ、畿央大学大学院へ進学、脳波を用いた研究に携わる。現在富山大学大学院博士課程でコミュニケーションに関わる脳活動の研究を行う。